地獄の彦一
彦一もとうとう死んだ。さんざん人も狐もだまかしたもんだけん、地獄行きはきまっとると思うち、いまわのきわにカカさんに、重箱二段にケランモチ、もう一段にはアンの代りにワサビば入れち作らせて、そるばさげて地獄へ行ったげなたい。「彦一、もう来るだろうと待っとったぞ。」と、エンマさんが言わした。「エンマさん、お世話になります。みやげば持って来ました。はようたべてくだはり。一段目はケランモチ、二段目はずっとうまかケランモチ、三段目はまあだうまかもんですが、こやつは、川の中で食わんと味が出まっせん。」エンマさんが三段目の重箱ば持って川につかって、一つ口に入れたら、「わあっ」と泣き出してバタグルわした。いつもエンマさんにこきつかわれとる鬼になわでしばらせち、「エンマさん、私ばほどようしなっせよ。」といわしてニコとわらわしとな。
粉すくい
彦一が、まあだ子どもの時のこつげなたい。うちが、きつかったもんだけん、感心にも野菜ば売ったり、つかい走りばして加勢しよったげな。ある日、粉ばひいて売る店の前ばとおりかかったら、そこにおったひとし達が、
「おい、彦一来てみさい。ぬしゃ感心な者ない。よう孝行ばする。きょうはそのほうびに、ここにある粉ば、ぬしが持って行ききるしこやるけん、持って行け。そるばってん、粉はこのショウケですくえよ。」
と、目のあらかショウケば出したげな。
「そらあ、ありがとうございます。」
彦一が、どぎゃんするどかと、みんなで見とった。彦一は、うちから桶ば二つ持って来て、一つに水ばいっぱい入れた。その水にショウケばつけて、それを粉の山につっこんで、何べんももう一つの桶で、うちへ持って行ったげな。
ヤンモチまんじゅう
彦一、今日はどこ行きかい。弁当持って。
「竜峰山に行くとたい。」
ふろしきづつみを、ぶらぶらさせて、とっぺんにのぼったら、うしろからベッビン狐がのぼってくるげなもん。
「どら、このあたりでひるねばせんばん。」
と言うてゴロリとねた。
ベッビン狐は、そろっとそばのつつみばとって、いちもくさんに山のすみかに走って行って、子狐ばひきつれて、山のとっぺんの岩にのぼった。
「今から、ここでべんとうびらきばするばい。いつも泣かされちばかりおる彦一ヤツのべんとうばとって来たったい。」
と、得意になって開けたら、まんじゅうが10こはいっとる。一番太かつを上の子狐に食わせたら、うまかうまかと、よろこんだ。それで、ほかの子狐にも分けてやって、自分もほうばったら、アンはやんもちだったげなもんだけん、アゴのひっちいて、泣き出したげな。ひとつだけは、ほんまんじゅうだったったい