彦一物語

生きている絵

生きている絵

「ゴインキョさん、めずらしかもんが手に入りましたけん、見に来なりまっせんか。」
と、ブゲン者のゴインキョさんば連れて来た彦一が、掛軸ば見せた。女が傘持って立っとる絵だった。
「雨の降る日にゃこの傘ばさします。めずらしいものですばい。」
ゴインキョさんが雨の日に行ってみたら、ほんなこて傘ばさして、ちょっとスソばからげとる。
「おれに、ゆずってくれんかい。」
「どうし、どうし、こらぁうちの家宝にしますとです。」
と、彦一がもったいつけたけん、しこてこ金ばやって、ようようゴインキョさんは、自分のものにしなったげな。ばってん、雨が降って来てもただ傘ば持って立っとる。
「おい彦一、だましたばいな。」
「ゴインキョさんな、飯ば椀にもってやんならんでしたろ。そっで死んだっですたい。」
晴、雨、二枚の絵ばかけかえて見せたっげなたい。

旗という字

正月のドンドヤの前の日のこつだったげなたい。子供が十人ばかり集まって、ドンドヤのしこ(準備)ばしておった。竹はマン中に立ちゅうして、そん上につける色紙に「ハタ」という字ば書こうとしたばってんが、一人も知らんげなもん。
「カナで書いて、うっちょこや。」
「そるばってん、正月だけん漢字で書かんとエンギの悪かぞ。」
そこへ、彦一が通りかかった。
「ああ彦一おじさん、字ば教えてはいよ。」
「ああたは、そうにゃ頭のよかけん知っとんなっど。」
「ハタという字たい。」
さすがの彦一も漢字はトコロドコロしか知らんだったげな。
「ハタという字かい。そらぁね、竹へんにピラピラと書くとよかばい

太か友だち

彦一が、めずらしゅう神妙になって、つきあいの百姓家の仕事のヒマの時、馬ば借って、竜峰山にタキギとりに行ったげなたい。日暮れになって、馬に一ぱいつんで帰りよって風呂屋の前まで来たら、そこ主人が呼 びとめた。
「そのタキモンないくらにしとくか。」
「百文であげまっしゅ。」
「ちった高かごたるばってん、馬の背中のは全部だろたい。そんならよかたい。」
タキギは、全部おろして、だいじなクラも綱も何もかんもとってしもたげな。
二、三日してから、
「おじやん、日暮れ風呂に入れなっせな。わしがツキアイも連れて来るがよかろうか。ちったふとかばってんがよかろ。」
「ああ、よかよか。」
この前の馬ばひいて入ろうとしたけん、ことわってクラも綱ももどさしたげな。

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