狐とやんぼし
ある日のこつ、やんぼしどんが萩原のともば行きよらすとこれ、狐やつが草に、ひんねしとったてたい。そっば見たやんぼしどんな、ふざけてかり太かほら貝を、狐の耳のとこっで「ウワーン」て吹きならきゃて見とらすと、トロトロ よか気持で寝とった狐やつぁ飛びあがるごつ、たんがって「キャンキャン」にゃあて、麓ン山ン中さん逃げち行ったてたい。はらを抱えて、脳のねじるうごつ笑うて見とらしたてたい。狐の耳のンコマクの打ちゃぶれてかり、いっちょん聞こえんごつなったげな。そっで狐やつぁ、そうにくらしくて、どぎゃんなっとして、やんぼしどんばやっつけちやろて、なんのかんのて思案したばってん、あからんもんだけん、しょてかり知っとった、出町ン彦一に間きたげん
「やしいこったい。こぎゃんしてみんかー。」
て、教えたげな。こんやんぼしどんな、八代にきてから、よう泊まる百姓家の宮地にあったげな。狐やつは彦一教えられたごつ、ある日、そこん家のもんの畑さん行かすとば、つけち行たてかり、わざとそん百姓の者の目につくこつして、藪中かりチョコチョコ姿ばじゃて、しば葉や草の葉ば体にひっつけち、やんぼしどんにばけちみせたげな。そしてかり、そんまま宮地の家さん行くまねばして山さんもどっていったげな。百姓は仕事をすんでかり家さんもどって見つとやんぼしどんの、縁がわゃ腰かけて煙草どんのみよらすもんだけん
「おどりゃ、こん狐げだ!まあだ、やんぼしどんに化けとる。」
て、言うてかりとなりきんぺんのもんば、よびあつめちきとって、太かこん棒や、竹ン棒で、やんぼしどんばポカポカめった打ちィさしたげな。やんぼしどんな、ほんなこてふてめおうて逃げじゃあて、そっかさき、八代に姿ば見せらっさんごっならしたげな。
めかくし競走
稲荷さんの祭ンのよびもんな、目かくし競走げなたい。出町かっと、となりン村かっと、選手ば一人ずつじゃあて、いちいん鳥居かり拝殿までん石段ば、目かくししてかり走りのぼる競走げなたい。
「ドドン、ドンドンドン・・・。」
大太鼓ンなりはじむっとしゃがにゃ、ふたりの選手は一ときイ走っじゃあたげな。はじめんうちゃ、隣ン村ン選手が早ようして、すぐじゃ四、五メートルばっかりひっぱなちぁたてたい。
とこるが、石段ンのとけくっと、つっこけちばっかぁおって、あんまりゃ前さんにゃ進まんてたい。それくらぶっと、出町ン選手はコツコツて石段ばたちゃて、ちょうどあんまさんのごつしてドンドンあがっていかすとたい。
そっだもんだいけん、すぐじゃ隣ン村ン選手ば追いぬいて勝たしたげな。出町ン者たちゃ手ばたちゃぁて、そうにゃ喜こばしたてたい。
勝たした出町ン選手ン「ハアハア」言うち、目かくしば、はずさすとしゃがにゃ、見とったもんのみんな、そうにゃ笑いだしたげな。なんの、そん選手は、ほんなもんに目のみえらっさんだったてたい。こんも彦一ン入れ知恵だったげ な。
草ばんかげ
あるとき、彦一ちゃ親方さんがえいたて、たのんだげな。
「もう、おんも長ぁこたなかごたる。こぎゃん年とってしもたもんな、こんごら、よう、やみたおすごつなってしもたっですたい。そっでですな、ほんなこてすまんこつですばってん、めいどに行くぜんば、ちっとばっかり、きゃあてなくだまっせんどか。」
彦一が、もう目にゃかからんごて、あわれなこつば言うもんだけん、親方さんも、むげえこって思うち、ぜんばきゃてやらしたげな。とこぉが十日ばっかりしたある日のこつ、親方さんの、くま川ンともば歩りて町 さんもどってきよらすとに、彦一ちゃ きゃあおうてしもたげな。
「彦一、ぬしゃとつけみにゃ うそば言うたね。こんまえにゃ、もうあうこつもなかごていうたろが。」
そるば聞いた彦一ちゃ、どてん草ば頭ン上のせてかり、
「はい、そっでですな、草ばんかげかり親方さんば、おごうどりますたい。」
て、いうち、親方さんばおがんどったげな。こっば見らした親方さんも、笑るうち家さんもどらしたてたい。