たぬきの入道
きつねやつが、いつも彦一ィだまされちばっかりおっとば見かねち、たぬきやつが萩原ン土手で、彦一ば待つとったげな。「彦一ちゃん。」
「オー、たぬ公かい。」
「きつねやつぁ、ちったばかばいな。いっでん彦一ちゃんにかつがれち・・・。」
「ハッハッハッ・・・・・・ぬしゃ りこさんのごたるね。」
「エー きつねとにゃちがいますばい。」
「そぎゃんかい、なんにばくっとが得意かい。」
「わたしゃ一つ目小憎でん大入道でん……。」
「ほんならいっちょ、ばけくらんごばしてみゅうか。」
「うん、そらおもしろかな、やりまっしゅ。」
「ねーたぬ公見てんさい、あっちかりつえばちいて、としよんの来よらすどが、あんひとば、ぬしが大入道でたんがらせきんなら、おるが負けたい。」
たぬきやつぁ笑うて、
「アッハッハッハッ……わしが大入道になんなら、どぎゃンもんでンひったまがるけんな、まあ見とってみなっせ。」
たぬきやつが雲ンとどくごたる大入道にばけたばってん、じいさんな、なんのこつもなかごつして歩いていかすげな。
「彦一ちゃん、こぎゃんきもン太かもんな、はじめっな。」
たぬきやつぁ、いきばせっきってか「フウフウ」言うたげな。
「そんならこんだぁおるがすっけん、よう見とけよ。」て、いうて、
「ヒヒーン・・・。」
て馬んなきまねばしたげな。
とこるが、じいさんなひったまがって、道のかたすみィちぢくれらしたげな。こんじいさんな、あけめくらのあんまさんだったてたい。
彦一のぜに拾い
八代ン城下ン町人どんが、
「道ばあゆみよって、ひょっと道ばたん落っとるぜんば拾うとんごつ、うれしかこつぁなか。」
て、話しながり通りよったっば聞いとった彦一も、おるもいっちょぜんば拾いぎゃ出かきゅうかて、八代ン町ばされたばってん、どけんもぜんな落ちとらんだったげな。
そっで、彦一も考えて、自分のぜんぶくろかり、ぜんば出ャて道ばたん草ン中きゃふしてて、そるば拾うてみゅうて、草わりゃんなかばさぎゃてみたげなもん。
とこるが、さっかりなげたばっかりのぜんの、どぎゃんしてんみつからんもんだけん、ぜんのおしゅして、なきべすかぶって、草わらんなきャさがしまわったばってん、どぎゃんしてんみつけださん。
こまってしもうた彦一ァ、子どんがするまじないば考え出ゃて、手んひりゃぁつばばのせち、指でポンてたたゃて見たげな。
すっと、つばは東の方さんとうでいったもんだけん、つばんおちったあたりば、いしょうけんめさぎゃてみたげな。
とこるが草ン根ンとこり、ぜんのうっぱすまっとったてたい。
彦一ァ着もんの袖で、汗ばふきながり、ぜんばにぎって、
「ほんなこつ、せんば拾うとはうれしかー。」
彦一の経文
彦一がえんおっかさんの死なしてかり、今日でもう一周忌になるげな。彦一ちゃ仏さんにお経ばあげちやらんばんて思うたばってん、ぼんさんばやとうぜんのなかもんだいけん、ぜんのかからんこじき坊主ばつれちきて、仏さんの前、坐わらせたげな。とこるが、お経ばあげにゃん時ィなったばってん、こじき坊主のお経ば知っとるはずのなか。ちょうどそんとき、かべン穴かりねずみやつが、チョロチョロつらばだゃたもんだいけん、
「おんチョロ、チョロチョロて、でぇらした。」
て、お経ばとなえらしたげな。たんがったねずみやつが、つらばひっこむっとしゃがな、
「てぇ、いうたら、ひっこうだ。」
ねずみやつが、チョロチョロて逃げたりゃ、
「こんちくしょう、まぁて、のがさんぞ一。」
うしろん方で、こんようすば見とった彦一、おかしゅうなってしもうたげな。とこるが彦一ちゃ、こんおかしかったお経は忘れきらんどこるか、あるばん、ねごついいよったげな。そんとけ泥棒やつがひゃってきて、そろっと戸のふし穴かりのぜてみたりゃ、
「おんチョロ、チョロて、でえらした。」
ひやってして、首ばひっこむっとしゃがな、
「てぇ、ゆうたら、ひっこうだ。」
彦一やつ、ねとるておもとったばってん、泥棒もごらばかしげてにげ出すと、「こんちくしょう、まぁて、のがさんぞー。」たんがった泥棒やつ、ごたぁんかなわでん、ころびでたげな。