彦一の負
彦一も奥さんにはまいっていました。あしたは熊本まで歩いて行くという前の晩、奥さんに内緒でニゴリ酒を買って、戸棚に入れときます。奥さんは、お金をかせがず、酒ばかり飲んでいる彦一が隠しているニゴリ酒を、あくる朝、米のトギ汁とすりかえておいたのです。
彦一は、顔も洗ないで、奥さんにわからいようにキュツとニゴリ酒を飲んで出かけた。もうこのへんではニゴリ酒のキキメが出るはず・・・・・・とクビをひねり、一向元気が出ません。そのうちに足が疲れてくるのです。熊本へほうほうの程でつきました。米のトギ汁ですので、馬力が出ません。周りは口々に
「彦一、とってつかれているが、また二日酔いじゃないか。」
「なんの二日酔いだろかい。酒やつにだまされたようだ。」
奥さんに内緒にしたニゴリ酒、一本とられていました。
彦一は、顔も洗ないで、奥さんにわからいようにキュツとニゴリ酒を飲んで出かけた。もうこのへんではニゴリ酒のキキメが出るはず・・・・・・とクビをひねり、一向元気が出ません。そのうちに足が疲れてくるのです。熊本へほうほうの程でつきました。米のトギ汁ですので、馬力が出ません。周りは口々に
「彦一、とってつかれているが、また二日酔いじゃないか。」
「なんの二日酔いだろかい。酒やつにだまされたようだ。」
奥さんに内緒にしたニゴリ酒、一本とられていました。
ドジョウ汁
「彦一、ドジョウばうんとばかりもろうたけん、久しぶり集まって飯ば食おうや。」と近所の仁が言うてきた。四、五人集まることになって、それぞれ醤油、砂糖、野菜というぐあいに持ちよった。彦一は生豆腐ば2丁持って行った。「おらあドジョウはいらんけん、その汁の中にこの豆腐ば切らでん入れといてくれ。豆腐ばっかり食えばヨカ。」そして、急用があるけん、後から来るというて出ていったげな。ドジョウ汁が煮えたってきた。さあもうよかろう、食おうか。となべのまわりによってフタばとって、ホケのホヤホヤする中から、ドジョウばすくおうとしたら一匹も見えん。「わるがさきに食うたろ。」と、大げんか。彦一が来て豆腐ばもろうちきゃあもどったげな。ドジョウは煮られたあつさに、つめたか豆腐の中にもぐりこうでしもうとったげな
サンカンの狐
八代の高田と日奈久温泉と言うところの間に、サンカンの狐というのがいて、よう人ばだましよったもん。ある日、彦一はカカさんと話し合って、馬にのせてサンカンを通りかかって、
「カカさん、一週間するとヨカにわとりば持って迎えに来るけん、それまでゆっくり日奈久の湯につかっとんなはりよ。」とおめえて通って行った。一週間目にうすぐろうなってから馬のクラに、にわとりばくびりつけてサンカンまで来ると、カカさんが柳のかげから、
「あんまりおそかもんだけん、ここまで来とったたい。」
「そらすまんだったな、早うのんなはり。」
カカさんが馬にのった。
「にわとりはおるが手にもとう。」
というカカさんばクラの上に縄でしばりつけて、
「つっこけなはんなよ。」
と鼻高々ともどって来た。ほんとのカカさんは、あくる日にもどってこらしたげな。