かねのなる木
彦一が、京都の本願寺まいりばしたげなたい。そばの宿屋にとまったら、そこ主人が、むごう庭造りが好きで、自分の庭ば自慢して見せたげな。
「フム、なかなかよか庭でござすな。そるばってん惜しいこつにゃ、じゅうりカズラと、かねのなる木がござっせんな。これがあるとまあだウチ上りますばい。さいわい肥後八代の私のうちに持っとりますけん、あげまっしゅ。」
と言うたげなもんだけん、主人はよろこうで、ごちそうばうんとこしょしたげなたい。もどりに、彦一について八代まで来た主人は、彦一のうちの狭か庭に立って、キョロキョロしとるげなもん。右と左に這うとるゴリばさして、
「ゴリとゴリでじゅうりカズラですたい。」
シュロの木ばさして、
「こやつで、寺の鐘のなるシコ木ば作んなっせ、カネのなる木ですたい。さああげまっしゅ。」
はなせ、はなせ
彦一が、熊本からのもどり道、宇土の茶店でおもしろか話しで皆をワンワンはずませた。出かきゅうとしたら、
「八代へ行くとは幸い、同道いたせ。」と、二人の武士が、しゃりむり道連れにしたげなもん。
「しもうた。」
と思うたげなばってん
「ヘイ、ヘイ。」
と、手ばこすり合わせち、ついて行ったげな。一人の方は、鼻がつっかげとったげなもんだけん、妙な声で、
「ハナセ、ハナセ」
と、話ばさいそくする。その「ハナセ、ハナセ。」が気味の悪かもんだけん、
「決して立腹なさいますなよ。」
と、ことわって、
「竜峰山にすむ天狗が、相撲ばとろうとせがみますので、ヨシと言うて取り組みましたが、その力の強さ、強さ。パッと離れて天狗の高い鼻に両手でぶらさがりました。そしたら妙な声でハナセ、ハナセと言いました。」
「無礼者!」
と、刀に手をかけた武士を、一方がとめて、
「早う去がれ。」
と、言うたげな。
キャクさる鯛
彦一がブラッと八代の町を歩きよったら、魚売りが、威勢のよか声で、
「鯛ヨイ、鯛ヨイ。」
と、ふれて行くのに出会った。
「ようし、」
と思って、
「鯛ヨイ、鯛ヨイ。」
にひっつけて、
「キャクさっと、キャクさっと。」
と、太か声でおめく。
「鯛ヨイ、鯛ヨイ。」「キャクさっと、キャクきっと。」
魚売りが、カンカンはらきゃあて、
「彦一、どうしてじゃまくるか。この鯛ばみてみい。こぎゃんイキのよかっぞ。そるばキャクさっと(くさってる)は何ごとか。」
「そるばってん、その鯛ば買うて、キャクさっと(客をする)だろうもね。」
魚売りは、キャフンとまいって、太か鯛ばやってことわったげな。
犬になった彦一
おい彦一、久しぶりブリば腹一ぱい食うてみゆうかい。」と、さそいに来た。
「タダのごたるげな。」
「よかたい、行こい。」
二人つれだって、中島町のサカナ屋から一尾ずつ買(こ)うて、出町までもどりよったら、途中でむごうふとか犬やつが、そのブリばめがけてほえかかって来た。弥一どんないっさんに逃げだした。彦一は尻ばからげて、ゆるっと四つん這いになって、ブリばくわえたげな。犬は仲間のくわえとっとは、とられんばし思うたもねろ、弥一どんば追っかけたもんだけん、弥一どんな、えいっとかけごえかけてぶりやらしたげな。
彦一は尻ばからげて、ゆるっと四つん這いになって、ブリばくわえたげな。犬は仲間のくわえとっとは、とられんばし思うたもねろ、弥一どんば追っかけたもんだけん、弥一どんな、えいっとかけごえかけてぶりやらしたげな。